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相続手続き

相続登記で最初にすることは?基礎知識から注意するべきデメリットまで解説

相続登記で最初にすることは?基礎知識から注意するべきデメリットまで解説

相続登記とは、亡くなった人から不動産を引き継いだ際に行う名義変更手続きのこと。新しい不動産所有者を明確にするためにも大切な手続きとなりますが、その手順や、放置した場合のデメリットは意外と知らない人が多いものです。

相続登記を怠ってしまうと、税制面で損をしてしまうだけでなく、不動産を差し押さえられてしまい、結果的に不動産の所有権を得られなくなってしまう可能性があります。

不測の事態に発展する前に、相続登記の基礎知識や申請手続きの流れ、費用や必要書類についても知識を深め、次に取るべきアクションを把握しましょう。

相続登記の基礎知識

不動産を相続した場合、不動産の名義変更となる相続登記は必ず行わなければいけません。相続登記の申請手続きに疑問をお持ちの方へ、まずは相続登記の基礎知識を解説します。

相続登記を行うのは「相続人」ら

日本では、土地や建物の所有者を明確にするために「不動産登記」を行うのが原則です。(未登記の建物は、市町村役場からの固定資産税課税通知書の家屋番号欄の表示がありません。)

不動産登記簿にある、土地や建物の名義を変更するためには、法務局で申請手続きをしなければいけません。相続登記は、不動産を遺言や遺産分割で相続した人、遺言で遺贈を受けた人、死因贈与契約をした人が、単独または共同で法務局に申請します。

なお、予め相続手続きをする者を定めている場合には、遺言執行者などが申請を行います。一般的には、相続登記の申請手続きは、司法書士に委任することが多いです。

相続人は、相続の仕方によって決まる

遺産相続の中でも、不動産相続はトラブルが起きやすいと言われています。誰が相続するのか、相続人を決める方法は、大きく分けて3通りあります。

1.遺言書に従う

遺言書があれば、その内容に従って相続人が容易に決まります。

2.遺産分割協議で決める

遺言書がない場合は相続人同士で話し合う「遺産分割協議」を行い、誰が不動産を引き継ぐのかを決定します。決めた内容に全員が合意したら、その内容を遺産分割協議書にまとめ、相続人全員の署名・捺印をします。

3.法定相続分に従う

被相続人が遺言書を遺しておらず、相続人同士で遺産分割協議も行えない場合には、民法によって定められた分配割合となる「法定相続分」に従って相続することになります。相続人が複数になった場合、相続人のうち誰か一人が申請人になることもできますし、相続人全員で申請することも可能です。相続人が複数人いる場合、申請者以外の人には登記識別情報通知書が発行されない点に留意しましょう。

相続登記の期限は所有権を持ってから3年以内

これまで相続登記に期限や義務はありませんでしたが、令和6年4月1日の法改正によって相続登記申請が義務化されました。その結果、相続による不動産取得後(不動産の相続を知った日から)3年以内に登記手続きを行わなければ10万円以下の過料対象となります。

なぜ、相続登記は義務化されたのか。その背景には、所有者不明土地の増加問題があります。日本国内では、相続登記が行われず所有者不明のままの土地、所有者が分かっていても所在不明のため連絡がつかない土地が頻出しており、その規模は2016年時点で九州本島の土地面積を上回る規模となる410万ヘクタールと推計されています。(法務省調べ)

余分な過料の支払いを避けるためだけでなく、所有者不明土地の発生を防ぐためにも、相続登記の申請は欠かせないのです。

参考:所有者不明土地の実態把握の状況について | 国土交通省

義務化に伴う相続登記申請は、過去に相続した物件も対象

相続登記は令和6年から義務化されましたが、施行日以前に発生した相続物件にも適用されます。令和6年4月1日よりも前に相続した不動産で、未だ相続登記を申請していない物件をお持ちの方は、令和9年3月31日までに登記を完了しましょう。

※不動産を相続していたことを知った日が施行日以降(令和6年4月以降)の場合は、知った日から3年以内に相続登記を行う。

参考:相続登記の申請義務化特設ページ

相続登記の流れ

相続登記は一般的に下記の手順で進められます。

1.相続する不動産の確認

2.不動産を誰が引き継ぐかを決める

3.相続登記に必要な書類を集める

4.法務局へ登記申請をする

5.市町村役場への連絡

1.相続する不動産の確認

相続登記を始める前に、まずは相続した不動産の状態、権利関係を明確にしましょう。被相続人が所有していた不動産を確認するためには、固定資産税納税通知書もしくは名寄帳を確認します。固定資産税納税通知書は、毎年4月頃に不動産のある市区町村から送付されます。名寄帳は、被相続人が不動産を所有していた市区町村役場の窓口(または郵送)で取得しましょう。

より詳細内容を確認できる書類として、登記事項証明書(登記簿謄本)もあります。登記事項証明書を紛失してしまった場合、管轄の法務局で入手して調べることもできますし、オンラインでの閲覧・申請も可能です。

相続した不動産が、被相続人の配偶者や他の親族との共有名義になっていた場合、相続できるのは「被相続人の持ち分だけ」ということもあります。間違いがないよう、念入りにチェックしましょう。

2.不動産を誰が引き継ぐかを決める

相続登記には、「遺言による相続登記」「遺産分割による相続登記」「法定相続分による相続登記」の3パターンがあります。一般的な手続き方法は、相続人全員で遺産をどのように分けるかを話し合う「遺産分割協議による相続登記」です。

最初から相続人が一人しかいない場合は遺産分割協議の必要がなく、該当する方が相続登記を行います。相続登記の前に遺産分割協議が発生するのは、相続人が複数人いる場合です。どの手続き方法で申請するかによって必要書類の内容も異なります。

3.相続登記に必要な書類を集める

「遺言による相続登記」「遺産分割による相続登記」「法定相続分による相続登記」それぞれの手続き方法に対し、主に必要となる書類は下記の通りです。

 

【相続登記に添付する必要書類】◯:必要/△:限定的に必要な場合あり/×:不要

 

遺言

遺産分割

法定相続分

登記申請書

収入印紙

被相続人の戸籍謄本

△※1

被相続人の住民票の除票

固定資産評価証明書

相続人の戸籍謄本

△※2

相続人の住民票

△※2

△※2

相続人の印鑑証明書

×

×

遺言書

×

×

遺産分割協議書

×

×

※1:死亡時の戸籍のみで良い場合あり

※2:不動産を取得した相続人のみ必要

事例によっては、上記以外の書類が必要になることがあります。

3つの方法の中でも遺産分割協議による相続登記は特に必要書類が多いため、漏れがないように準備しましょう。

4.法務局へ登記申請をする

相続登記の申請に必要な書類が一通り集まったら、いよいよ管轄の法務局へ登記申請を行います。不動産の住所地を管轄する法務局へ行き、不動産登記の窓口で登記申請書と添付書類一式を提出しましょう。

申請方法は直接法務局へ行く以外にも、オンライン申請もしくは郵送申請から選択できます。

登記申請の際には登録免許税の納付が必要となるため、申請とは別の窓口で必要分の収入印紙を購入し、申請書に貼り付けてから提出となります。

5.市町村役場への連絡

被相続人が単独で不動産を所有していた場合、市町村役場としては、次に納税義務者(課税通知書の送付先)が誰になるのかを確認する必要があります。そのため、推定相続人の元にお尋ね文書が届くことがあります。
相続登記を行う予定がある場合は、その旨を回答すれば問題ありません。
相続登記の手続きに時間を要する、あるいは何らかの事情で登記がすぐにできない場合には、該当の市町村役場とのやりとりが必要です。市町村役場としては、代表者に納税してもらえれば良いので、相続人同士で代表者を話し合いの上、役場に連絡しましょう。

相続登記にかかる費用

相続登記にかかる費用として、「登録免許税」「各種証明書の取得費用」「司法書士に支払う報酬」の3つが挙げられます。

登録免許税

相続登記には、必ず登録免許税が発生します。相続の場合、登録免許税の価格は土地・家屋の固定資産評価額の0.4%が登録免許税として課税されます。

例えば、固定資産評価額が1000万円であれば4万円が登録免許税になるということです。同金額の収入印紙を法務局や郵便局で購入し、登記申請書に貼り付けてから提出しましょう。

なお、令和9年3月31日までは相続登記を促進するために登録免許税の免税措置が定められているため、下記いずれかに該当する場合、登録免許税は非課税となります。

1.相続により土地を取得した人が相続登記をせずに死亡した場合

2.評価額が100万円以下の土地について相続登記をする場合

また、法定相続人以外の人が遺贈によって不動産を取得した場合、税率が1,000分の4(0.4%)ではなく、1,000分の20(2%)に跳ね上がるので気をつけましょう。

参考:No.7191 登録免許税の税額表 | 国税庁

参考:相続登記の登録免許税の免税措置について | 法務局

各種証明書の取得費用

相続登記で必要となる書類各種の発行には、発行手数料がかかります。

【相続登記の必要書類と価格】

必要書類

価格

戸籍謄本

1通450円

住民票の除票

1通200~400円ほど

改製原戸籍謄本

1通750円

固定資産評価証明書

1通200〜400円ほど

住民票

1通200〜300円ほど

印鑑証明書

1通200〜300円ほど

名寄帳

無料〜300円

※価格は自治体によって異なる場合があります

相続登記における必要書類は複数点あります。抜け漏れがないように準備しましょう。

司法書士に支払う報酬

登記申請を司法書士に依頼した場合、報酬を支払うことになります。司法書士に支払う報酬の価格相場は10万円前後です。

司法書士の報酬は事務所ごとに報酬の基準額を定めた「報酬規程表」を定める必要があり、それを依頼者に説明する義務もあります。どの事務所にしようか迷ったら、見積書の作成を依頼する、もしくは報酬規程表を基に説明を受けてから依頼をしましょう。

「相続税」は相続登記で発生するものではない

相続税は、相続によって得た利益が基礎控除額(3000万円+法定相続人1人につき600万円)よりも大きい場合に発生する税金であり、相続登記に直接関係するものではありません。相続登記をしていなくても、基礎控除額を超えた相続には相続税が課税されます。

相続登記をしないことで発生する3つのデメリット

相続登記が義務化されたことで期限内に申請手続きをしていなければ罰則の対象になりますが、その他にもデメリットがあります。

相続した不動産を売却できない

登記名義人が亡くなった時点で所有権は相続人に引き継がれ、相続人には不動産を処分する権限があります。しかし、相続した不動産が被相続人名義のままでは、売却して買主名義に変更する所有権の移転登記はできません。

不動産売却では、登記名義人と所有者が同一人物であることが大前提です。そのため、不動産相続が発生した場合、一般的には不動産売却と相続登記の準備を並行して行っていかなければいけないのです。相続登記が完了しているかどうかによって土地の資産評価額が落ち込んでしまう可能性もあります。不動産売却時の足かせとならないように、相続登記の申請手続きは必ず行いましょう。

相続した不動産を担保に融資を受けられない

自分名義の不動産があれば、それを担保に金融機関から借り入れをすることができます。しかし、相続した不動産の名義が被相続人のままの場合は、融資が受けられません。

これは、相続した不動産が被相続人名義のままでは、銀行は抵当権設定登記をすることができず、担保設定を行えないためです。資金調達などを理由に融資を希望している場合は必ず自分の名義に変更しておきましょう。

相続登記は早めの申請が肝心!

相続登記の申請手続きには、早くても数週間から2カ月ほどの期間を要します。相続登記を3年以内に済ませないことで、10万円以下の過料が科されるだけでなく、相続した不動産を売却できなくなる、融資を受けられないなど、デメリットばかりが続出します。

遺産分割協議書や登記申請書の作成は司法書士に依頼することもできるので、専門家の後押しをもらいながら、複雑な登記申請をスムーズに完了しましょう。

他にも、相続手続きの基本について知りたい方は、「これだけは知っておきたい「相続手続きの基本」」もあわせてご覧ください。

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